上武大橋でのめぐり逢い 6903
橋の向こうの五十景
上武大橋
□上武大橋での めぐり逢い 6903
「彼女かい」
何処からか、声がする。
「彼女かい」
再び声がする。
「誰?」
少年は辺りを見回しながら問うてみた。
「さっき別れたのは彼女かい」
声は上武大橋の方から聞こえていた。
「橋が喋っている?」
少年は橋に向かって、再び問うてみた。
「ワシはいつも喋っているよ」
「ただ、クルマの音で聞こえないだけじゃ」
橋はゆっくり話し始めた。
驚いた少年は、あわてて彼女を探したが、すでに側道橋を渡りきって暗闇の一部になっていた。
これが、少年と上武大橋との初めての出会いだった。橋からはシャー。シャー。コォー。コォー。とクルマの走る音だけが続いた。
□上武大橋 埼玉県深谷市・群馬県伊勢崎市 2021 september
□上武大橋での めぐり逢い
□物語はフィクションです。
□利根川に架かる側道橋から伊勢崎市を望む